北欧、フィンランドをこよなく愛するカフェ店主がつづる日々のあれやこれや。
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退屈のあまりこれを書き始めたいまは、土曜日の午後4時。いつもなら、わらわらと忙しく立ち働いているはずの時間なのに。

外は雨、客足もまばら。こんなときは、そんな状況にどっぷりつかって酔いしれてしまうというのも悪くない。ネが暗いのだ、たぶん。たとえば、内省的でサウダージ感覚あふれるカエターノ・ヴェローゾのNonesuch盤などは、まさにこういう気分のときのために存在するCD。そしてこのアルバムを聴くと、ぼくはきまってあるおじいさんのことを思い出すのだ。

そのおじいさんは独り暮らしで、ある一時ほぼ毎日のようにmoiに足を運んでくださっていた。若い時分はラグビーでならしたという、スポーツ好きでなかなかモダンな感覚をもったおじいさんだった。その日、ぼくはそのCDをかけていた。そのCDをかけていたということはきっと、「そういう気分」だったのだろう。

このアルバムにはカエターノ自身の代表曲のほか、ビートルズやマイケル・ジャクソン(!)などのヒット曲がボサノヴァ・スタイルでカヴァーされているのだが、それはコール・ポーターが作曲したスタンダード「Get Out Of Town」が流れているときだった。

「位置について!よーい!」

と、突然そのおじいさんが口にした。「はっ!?」よく状況がつかめないまま問い返すぼくに、それが歌詞の一部ーSo on your mark,get set,Get out of town(さあ、位置について!よーい!町を出るんだ)ーであることを教えてくれたのだった。なんでも、1936年の「ベルリンオリンピック」のときに、そのフレーズが一種の「流行語」のようになったのだそうだ。いわゆる「スタンダードナンバー」として知られているこの曲も、それが作られた1938年当時には巧みに「流行」をとりいれた最新のヒットナンバーだったというわけだ。三まわりほども年の離れた者同士が、こんなふうに思わぬきっかけでつながるのがぼくのかんがえるところの「カフェ」なのだ。

その後、おじいさんはぱったりとお店に姿を現さなくなってしまった。近々、自宅を引き払って「老人ホーム」に入るのだとよく口にしていたから、いまごろどこかの「老人ホーム」で悠々自適の生活を送られていることだろう。

位置について!よーい!

年のわりにはよく通る、おじいさんの「声」がときどききこえる。

Caetano Veloso Caetano Veloso
Caetano Veloso (1990/10/25)
Elektra/Nonesuch

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