北欧、フィンランドをこよなく愛するカフェ店主がつづる日々のあれやこれや。
雨を聞きながら、クロノス・クアルテットの演奏するビル・エヴァンスを聴いている。

ときおり強くなったり弱くなったりを繰り返しながら、でもいっこうに降りやむ気配を見せない6月の雨に、室内学的なアプローチでビル・エヴァンスの名曲をとりあげたこのアルバムはおどろくほど似つかわしい。

「雨」はときにロマンティックだったりセンチメンタルだったり、する。けれども、即物的な人間から言わせれば、それは人間の側のたんなる思い込みにすぎない。雨は、ただ降っているにすぎないのだから。そういう意味からすると、クロノス・クアルテットの演奏スタイルも、そこに一切のエモーショナルな解釈を差し挟まないという点で、また「雨」のようである。

ビル・エヴァンスの音楽はうつくしい。だが、その「うつくしさ」をロマンティックだったり、あるいはセンチメンタルだったりといったエモーショナルな部分に見ないのは、まさにクロノス・クアルテット流の「まなざし」といえる。その作業はたとえば、厚く塗りこめられた油絵の絵の具をていねいにぬぐってゆくことで、緻密で繊細なデッサンにたどりつこうという試みにも似ている。オープニング、弦楽四重奏により演奏される有名な「ワルツ・フォー・デビー」はため息がでるほどうつくしい。にもかかわらず、けっしてイージーリスニング的な甘い演奏になっていないのは、黙々と楽曲の《核心》をめざすかれらの演奏スタイルあってのものかもしれない。

このアルバムを聴いていると、ただただ降り続ける6月の雨もそんなに悪いもんじゃないな、そういう気分にさえなってくるから不思議である。※「試聴」できます↓

Music of Bill Evans Music of Bill Evans
Kronos Quartet、 他 (2004/07/06)
Savoy Jazz

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