北欧、フィンランドをこよなく愛するカフェ店主がつづる日々のあれやこれや。
なにが好きかと問われれば、「洋食」と答える。たべものの話、である。ハンバーグにエビフライ、カニクリームコロッケ、メンチカツにポークソテー、チキンライスにオムライス・・・ぼくにとって「ごちそう」とは、イタリアンでもフレンチでもなくて「洋食」のことなのである。

洋食というと、素材へのこだわりとていねいな仕事に裏打ちされた「職人仕事」というイメージがある。じっさい、洋食屋にはあまり《食のトレンド》とか追求してほしくないし、客をうならせる《サプライズな仕掛け》とも無縁であってほしい。ハンバーグはハンバーグらしく、エビフライはエビフライらしく、そして付け添えの野菜にも手を抜かない、ぼくのかんがえる「よい洋食屋」とはそういう店のことである。

そこで思い出さずにはいられないのが、朝比奈隆という指揮者である。93歳でこの世を去る直前まで現役でタクトをとりつづけた朝比奈は、その晩年ほとんどベートーヴェンとブラームス、それにブルックナーしか振らなかった。ごく限られたレパートリーを繰り返し演奏することでより楽曲の本質に迫り、その表現を深化させる、その姿勢はまさに「頑固な職人」と呼ぶにふさわしいものであった。そして、うまい洋食をつくる料理人とはおそらく、この朝比奈隆のようなタイプの人間にちがいない。逆にいえば、朝比奈隆がつくるハンバーグはさぞかしうまかったことだろう。

などと話は激しく脱線気味だが、画像は京橋にある人気の洋食屋レストラン・サカキのハンバーグ&エビフライ。ちゃんとしたハンバーグでありエビフライである。それ以上でも以下でもない、まさに職人仕事。コックコート姿でフライパンをあおる朝比奈隆を脳裏に思い浮かべながらおいしくたいらげた。

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