だいすきな建物が、またひとつ東京の街から姿を消そうとしている。
銀座へでかけたついでに、近々解体されることになる「三信ビル」へ足をはこび「さよなら」を告げてきた。なぜか子供のころから、日比谷の一角に建つこのビルがだいすきだった。外観はけっして目を引くようなつくりではないけれど、一歩足を踏みこんだときに広がるアーチの美しさ、そしてなんといってもディテールの装飾がすばらしかった。たとえば、二階のバルコニーの鉄柵を留めている真鍮製のビス。ひとつひとつ花を模した彫刻がほどこされたそれは、細部にまで徹底的にこだわりぬいたこの建物のもっともチャーミングな部分だとおもう。
テナントに洋書屋やカフェ、高級そうなフランス料理店や外国のエアラインの事務所などが軒をつらねるその空間に立つと、「まるでどこか外国に来たような」気分になったものだ。そして大人になった後も、近くまでくればいつも扉を押して用事があるわけでもないのに通り抜けたりする。「三信ビル」はぼくにとって、時々しか会わないけれど、会えばいつも可愛がってくれる親戚のおじさんのような存在なのかもしれない。
すでにほとんどのテナントが立ち退きを完了し、人気のないビルディングの中はとても薄暗く静かだった。建物の半分は封鎖され、残念なことに二階のバルコニーへ上がることもできない。「移転先がみつからない」という理由でいまだ営業を続けているただ一軒のテナント「ニュー・ワールド・サービス」のネオンだけが、最後のいのちのともしびのように寂しげに光っているのが印象的だった。

銀座へでかけたついでに、近々解体されることになる「三信ビル」へ足をはこび「さよなら」を告げてきた。なぜか子供のころから、日比谷の一角に建つこのビルがだいすきだった。外観はけっして目を引くようなつくりではないけれど、一歩足を踏みこんだときに広がるアーチの美しさ、そしてなんといってもディテールの装飾がすばらしかった。たとえば、二階のバルコニーの鉄柵を留めている真鍮製のビス。ひとつひとつ花を模した彫刻がほどこされたそれは、細部にまで徹底的にこだわりぬいたこの建物のもっともチャーミングな部分だとおもう。
テナントに洋書屋やカフェ、高級そうなフランス料理店や外国のエアラインの事務所などが軒をつらねるその空間に立つと、「まるでどこか外国に来たような」気分になったものだ。そして大人になった後も、近くまでくればいつも扉を押して用事があるわけでもないのに通り抜けたりする。「三信ビル」はぼくにとって、時々しか会わないけれど、会えばいつも可愛がってくれる親戚のおじさんのような存在なのかもしれない。
すでにほとんどのテナントが立ち退きを完了し、人気のないビルディングの中はとても薄暗く静かだった。建物の半分は封鎖され、残念なことに二階のバルコニーへ上がることもできない。「移転先がみつからない」という理由でいまだ営業を続けているただ一軒のテナント「ニュー・ワールド・サービス」のネオンだけが、最後のいのちのともしびのように寂しげに光っているのが印象的だった。

