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北欧、フィンランドをこよなく愛するカフェ店主がつづる日々のあれやこれや。

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正月なのに、味がしない。初詣にすら行ってない(泣)。

去年最後に読んだ本は吉本隆明の『ひきこもれ―ひとりの時間をもつということ』

ひきこもること、イコール「分断されない、ひとまとまりの時間をもつこと」と定義した上で、そうした「時間」が「自分が発して自分自身に価値をもたらすような言葉。感覚を刺激するのではなく、内臓に響いてくるような言葉」(それを彼は他人とコミュニュケートするための言葉ではない「第二の言語」と呼んでいる)をもたらすことに着目し、じっくりと自分にとっての「価値」を育て熟成させるためには「それもいいじゃないか」とみずからの「ひきこもり体験」を引き合いに出しながら語っている。

また、人は何ものかになるために「分断されない、ひとまとまりの時間」を必要としていると説く吉本は、「仕事」についてこんなアドバイスもしている。

ひきこもっていてもいいし、アルバイトをやりながらでも何でもいいから、気がついた時から、興味のあることに関して「手を動かす」ということをやっておくのが大事だ、と。そしてそれを10年続ける。「のんびりやろうが、普通にやろうが、急いてやろうが、とにかく10年という持続性があれば、かならず職業として成立」すると。

さらに、たとえ身近に「頭のいい人」が現れたとしても競り合うことはないと言う。なぜなら、なにかにつけて「自分を鋭く狭めてゆくところのある」頭のいい人は長い目でみればそんなにいいことでもないのだから。それよりはむしろ、めざすべきは「少しゆるんでいて、いい加減なところがあって、でも持続力だけはある」熟練した職業人なのである。

ところで、夜中眠れなくなってなんとなくテレビをつけていたら、指揮者朝比奈隆の「生誕100周年」を記念して制作されたドキュメンタリーが放送されていた。

93歳で亡くなる直前まで頻繁に指揮台に上がっていた朝比奈だが、晩年の彼のコンサートはほんとうに独特なものだった。華やかさとも巧さとも無縁なのだが、その音楽の巨大さ、生々しさときたら他のどんな指揮者とも比較にならないほどのインパクトがあったのだ。

ちなみに朝比奈隆の指揮者としてのキャリアは、なんと、65年!べつに朝比奈を「ひきこもり」というわけじゃないけれど、長年にわたる「持続力」があの音楽に満ち満ちた説得力をあたえたと考えるのはけっして間違ってはいないように思える。

ひきこもれ―ひとりの時間をもつということ (だいわ文庫)ひきこもれ―ひとりの時間をもつということ (だいわ文庫)
(2006/12/10)
吉本 隆明

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