北欧、フィンランドをこよなく愛するカフェ店主がつづる日々のあれやこれや。

2017/051234567891011121314151617181920212223242526272829302017/07

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
鈴本演芸場で、林家たい平師匠の「不動坊」を聴く。

「不動坊」という噺を聴いたのは、これが二回目。最初聴いたときには、後半のスラップスティックコメディー的な展開に「バカバカしい噺」という印象しか持たなかったのだけれど、なんだか今回はちょっとツボがちがった。ただこれはたい平師匠の演じ方というよりも、自分の心持ちのせいだろうと思う。

「不動坊」は、いい噺だ。「純愛」である。

長屋の大家さんとのやりとりにはじまり、長いあいだ思いを寄せていた未亡人「お滝さん」との縁談をもちかけられた吉兵衛のテンションが振り切れて妄想が爆発する前半も、たしかにバカバカしいことこのうえない。しかし、お滝さんの夫で講釈師の「不動坊火焔」が巡業先で客死したことを聞いた吉兵衛が驚きつつも大家に漏らすこんな言葉が、なかなかいい。


「お滝さんは、なにを隠そうあっしのおかみさんなんですよ、三年前っから」


いきなりなにを言い出すんだ? この男は…… と呆れる大家に、こう説明する。三年前、長屋に引っ越してきたお滝さんにすっかり一目惚れしてしまった吉兵衛。頭の中は寝ても覚めてもお滝さんワールド、恋煩いである。悩んで悩み抜いたあげく思いついたのは、「しばし、自分のおかみさんであるお滝さんを不動坊に貸してやってるのだ」と思い込むという案。身勝手である。身勝手にはちがいないが、まあ、誰にも迷惑はかけていないのでいいのである。じっさい、吉兵衛はこの「エアーおかみさん」ことお滝さんを思って仕事に精を出し、小金も蓄える。そんな吉兵衛の《真面目さ》を知っているからこそ、大家はお滝さんに吉兵衛との再婚をすすめ、お滝さんも「吉兵衛さんとなら……」と応えるのである。


「じゃあ、不動坊からお滝さんを返してもらおう!!」


ここに、奇跡が起こった。とはいえ、たんなる偶然のいたずらではなく、はたから見れば身勝手でバカバカしい妄想でも本人にとっては大真面目というふるまいがサヨナラ逆転満塁ホームラン的に恋愛を成就させてしまうところにこの噺の古きよきハリウッド映画的な心地よさがあるのではないか?

後半はご存知のとおり、ヤキモチから「長屋のアイドル」お滝さんを奪還しようと「お化け騒動」を仕掛ける三人組+万年前座の噺家によるドタバタ劇へと発展するのだが、その失敗は目にみえて明らかだ。だって、吉兵衛とは「了見」がちがうんだもん。

スラップスティックコメディー的な爆笑よりも、むしろ個人的にはこの「不動坊」という噺、吉兵衛のまっすぐな、ときにまっすぐ過ぎる一途な思いを祝福したいそんな噺といえる。
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。