北欧、フィンランドをこよなく愛するカフェ店主がつづる日々のあれやこれや。

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「(松江の)三十三ある町のそれぞれに、独自の怪談が残っているのではないかと思う」と、随筆「神々の国の首都」のなかでラフカディオ・ハーンは書いている(池田雅之訳)。事実、松江の神社仏閣で耳にしたり、妻セツから聞いた話をもとに彼はあの『怪談(Kwaidan)』を書いたのだった。

この『怪談』のなかでもとりわけ有名なのは、やはりなんといっても「耳なし芳一」ではないだろうか。当然(?)、松江にはこの「耳なし芳一」の銅像が存在する。記念に写真でも撮ってやろうと見にいったのだが、これがリアルに怖い。ファンシーな「耳なし芳一」というのもどうかとは思うが、なにもここまで怖くしなくたっていいのでは?おまけに急に暗くなってポツポツ雨まで降ってくるし・・・。というわけで画像はなし。

でも、いちばん怖かったのはバスの中でのことだ。松江には、旅でここを訪れたひとのために、市内の主だった観光スポットを周遊する路線バスが運行されている。一回百円、一日乗車券は五百円と手ごろだし、観光スポットを通過するごとにテープで解説が流れるのもありがたい。

それはバスが「松江大橋」にさしかかったときだった。車内には、松江大橋の工事をめぐるこんなエピソードが披露される(以下、バスガイド風の口調でお読み下さい)。

「この松江大橋の工事は難航をきわめ、何度も失敗をくりかえしますが、あるとき、たまたま通りかかった源助を人柱に立てたところ工事は無事成功・・・」

え、えーっ?!思わず叫んでしまった。というのも、「たまたま通りかかった源助を」のくだりが、あまりにもごくフツーのことといった感じにさらりと流されてしまったからにほかならない。「さすがにしょっちゅうとはいわないけど、わりとよくあるみたいだよ。たまたま通りかかった人を人柱にしちゃうみたいな。」そんな感じの軽さだ。いくらなんでも怖すぎる。

この「不運な源助」については、ラフカディオ・ハーンも書いている。それによると、どうやら「襠(まち)のついていない袴(はかま)をはいて橋を渡った最初の男が橋の下に埋められる、という決まり」があり、それにかなったのが「源助」だったというのが真相らしい。その後、ハーンが松江に滞在中、新しい橋の架け替えがあったそうなのだが、そのときにも「人柱」にまつわるさまざまなデマが流れ、おかげで多くのひとびと(おもに田舎の老人たち)がその橋に近づかなかったらしい。彼は、このエピソードを「都市神話」の類として理解している節もあるが、果たしてじっさいのところはどうなのだろう?

いずれにせよ、松江の街を歩くときにはじゅうぶん気をつけたほうがいい
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