
銀座を歩いていたら、たまたまこんな展示がひらかれていた。
「ポール・ヘニングセン PHランプと北欧のあかり」
展示というにはあまりにもささやかなものながら、「あかり」についてあらためて考えてみるきっかけとしては、それは十分におもしろいものだった。つまり、それだけふだん「あかり」というものについて無頓着だった、ということ。
会場で配布されていたレジュメにはこんなヘニングセンの言葉がある。
「夜を昼に変えることなど不可能だ」
照明家としての、これはもしかしたら「敗北宣言」?いや、そういうわけでなく、彼はこう続ける。
「わたしたちは24時間周期のリズムで生きており、人間は爽やかな昼の光から暖かみのある夕暮れへの光の移ろいに、ゆっくり順応するようにできているのだ。家庭での人工照明は、言うなれば、黄昏どきの光の状態と調和すべき」である、と。
現代の科学技術をもってして夜を昼に変えるのではなく、むしろこの現代にあってこそ、ひとをふたたび自然のリズムに同期させることの必要性を説くポール・ヘニングセン。そういえば以前、「不眠症」のひとは就寝前の数時間、間接照明にしてほどよい暗さのなかで過ごすとよいという話をテレビでやっていたけれど、「不眠症」のひとは家のあかりをPHランプにするとよい効果があるかもしれないな。
それはともかく、「ああ、暗い暗い」とつぶやきながら家じゅうの蛍光灯をつけてまわる父親の元に育ち、気がつけば読みさしの本を放り出して電気が煌々とともるなかガーガー眠っていることもめずらしくない人間としては、その「理念」はあまりにも気高く感じられるのだった。
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