というわけで、きのうはまたもや遠出の夢を阻まれ、なかばやけくそ気味に銀座へと出かけたのだった。銀座では食事をし、映画を観て、コーヒーをのんだ。
映画もこれが観たいと思って観たわけでなく、まず食事をする場所を決め、それからその近辺で上映中の作品でいちばんおもしろそうに思えたものを選んだにすぎない。ひどく消極的な理由とはいえ、予想以上にみどころのある映画だったのはせめてもの救いといっていいだろう。
十九世紀末のウィーンで人気を博したひとりの「幻影師」が、この映画『幻影師アイゼンハイム』の主人公である。「幻影師」といってもピンとこないかもしれないが、要は「Mr.マリック」のようなものだ。ただ、大事なのはこの映画の舞台が十九世紀末のウイーンだということにある。たとえば現代に生きるぼくらは、Mr.マリックの壮大かつ不可思議なパフォーマンスのウラには、かならずなにかしらの「タネ」や「仕掛け」が隠されていることを知っている。知った上で楽しんでいるのである。ところが、まだ科学も宗教も、哲学もおなじ鍋の中でいっしょくたにグラグラと煮立っていたこの時代にあっては、ちがっていた。神だと崇める者もいれば、悪魔だと誹謗する者もいる。魔法使いだと畏れる者もいれば、当然そのトリックを暴こうと躍起になっている者もいるといった具合に。「幻影師」は、そうした時代のひとびとの心理を巧みに利用し、持ち前の科学的知識で時代を攪乱する、いってみればトリックスターなのである。
少年の日、恋人から乞われても果たすことのできなかったマジックを十数年後、一世一代のトリックによって見事に成就するばかりか、時代さえも変えてしまうという荒唐無稽なストーリーながら、後半、この物語をただひとり俯瞰して見ている「ウール警部」のまなざしや皇太子の孤独や悲哀といった「もうひとつの視点」が流れ込んでくることで、もっと大きな「物語」が一挙にあぶりだされてくるようで思わず唸らされたのだった(ミルハウザーによる原作を読んでみたい)。
極力ストーリーに触れないよう書いている上、十九世紀末のヨーロッパに関心のないひとにはなおのことワケがわからないかもしれないのだが、ただボーッと観ているだけでも観客を飽きさせないよくできた映画だと思う。ヘソ曲がりのぼくではあるが、素直に面白かった。
映画の後は、歌舞伎座の裏手にあたらしくできたcafe凛の二号店、「cafe凛 east+」でコーヒーをのむ。山野楽器裏の一号店とはまったく趣きのちがう明るくてモダンな内装。じつは、moiを設計した関本竜太さんの大学時代の友人が手がけたものだそう。銀座の中心からはすこしはずれているので、ゆっくりお茶をするにはかえっていいかもしれない。
それにしても、傘の手ばなせない一日だった。
映画もこれが観たいと思って観たわけでなく、まず食事をする場所を決め、それからその近辺で上映中の作品でいちばんおもしろそうに思えたものを選んだにすぎない。ひどく消極的な理由とはいえ、予想以上にみどころのある映画だったのはせめてもの救いといっていいだろう。
十九世紀末のウィーンで人気を博したひとりの「幻影師」が、この映画『幻影師アイゼンハイム』の主人公である。「幻影師」といってもピンとこないかもしれないが、要は「Mr.マリック」のようなものだ。ただ、大事なのはこの映画の舞台が十九世紀末のウイーンだということにある。たとえば現代に生きるぼくらは、Mr.マリックの壮大かつ不可思議なパフォーマンスのウラには、かならずなにかしらの「タネ」や「仕掛け」が隠されていることを知っている。知った上で楽しんでいるのである。ところが、まだ科学も宗教も、哲学もおなじ鍋の中でいっしょくたにグラグラと煮立っていたこの時代にあっては、ちがっていた。神だと崇める者もいれば、悪魔だと誹謗する者もいる。魔法使いだと畏れる者もいれば、当然そのトリックを暴こうと躍起になっている者もいるといった具合に。「幻影師」は、そうした時代のひとびとの心理を巧みに利用し、持ち前の科学的知識で時代を攪乱する、いってみればトリックスターなのである。
少年の日、恋人から乞われても果たすことのできなかったマジックを十数年後、一世一代のトリックによって見事に成就するばかりか、時代さえも変えてしまうという荒唐無稽なストーリーながら、後半、この物語をただひとり俯瞰して見ている「ウール警部」のまなざしや皇太子の孤独や悲哀といった「もうひとつの視点」が流れ込んでくることで、もっと大きな「物語」が一挙にあぶりだされてくるようで思わず唸らされたのだった(ミルハウザーによる原作を読んでみたい)。
極力ストーリーに触れないよう書いている上、十九世紀末のヨーロッパに関心のないひとにはなおのことワケがわからないかもしれないのだが、ただボーッと観ているだけでも観客を飽きさせないよくできた映画だと思う。ヘソ曲がりのぼくではあるが、素直に面白かった。
映画の後は、歌舞伎座の裏手にあたらしくできたcafe凛の二号店、「cafe凛 east+」でコーヒーをのむ。山野楽器裏の一号店とはまったく趣きのちがう明るくてモダンな内装。じつは、moiを設計した関本竜太さんの大学時代の友人が手がけたものだそう。銀座の中心からはすこしはずれているので、ゆっくりお茶をするにはかえっていいかもしれない。
それにしても、傘の手ばなせない一日だった。
この記事へのコメント
おいしいサンドと、紅茶ありがとうございました。買い求めたジャムは娘が大変気に入り、10日で無くなりましたよ。在庫はまだありますか??
あ、それとこの「アイゼンハイム」パンフレットは買い求めましたか?この中に、映画に出てくる手品の解説をマジシャン西くんが書いているそうですよ。びっくりしました。
ちなみに、ウィーンはわたくしが唯一行った外国ですが、現地のガイドさんに「ウィーンは100年前も100年後も変わらない街なんですよ。また来てくださいね」と言われたことがあります。
あ、それとこの「アイゼンハイム」パンフレットは買い求めましたか?この中に、映画に出てくる手品の解説をマジシャン西くんが書いているそうですよ。びっくりしました。
ちなみに、ウィーンはわたくしが唯一行った外国ですが、現地のガイドさんに「ウィーンは100年前も100年後も変わらない街なんですよ。また来てくださいね」と言われたことがあります。
2008/06/05(木) 10:03 | URL | 藤代真由美 #ywW7zt0k[ 編集]
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