北欧、フィンランドをこよなく愛するカフェ店主がつづる日々のあれやこれや。

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ことし最初に観たのは、ジョン・フォード監督の手になる映画『静かなる男』。ひとことで言えば、無骨な映画。この映画を愛せるかどうかは、この無骨さを愛せるか否かにかかっているんじゃないだろうか。

アイルランドの血を引きながらも、移民の子としてアメリカで育った男(ジョン・ウェイン)が、ある「事件」をきっかけに自身のルーツであるアイルランドの村に「帰って」くる。偶然見かけた娘(モーリン・オハラ)にひとめぼれした男は、ほどなく娘と恋に落ち求婚するのだが、頑固で閉鎖的な村社会の因襲がふたりの幸福な結婚生活の行く手を阻む。ついには、彼のことをよく思っていない娘の兄(ビクター・マクラグレン)と「持参金」をめぐって壮絶な殴り合いをくりひろげることになるのだ。

ところで、ちょうどいま読んでいる本のなかで、吉本隆明がケンカの極意のようなものについてこんなふうに語っている。

で、まあ、僕はケンカを、引いて引いてもう我慢できねえっていう時に本気でやれば、だいたいは勝つと思うんですよ。

限界まで追いつめられはじめてひとは「本気」になることができる。本気になることによって恐怖心も克服され、結果「勝ちパターン」にもってゆけるのだ、というのである。じっさい、この映画でジョン・ウェイン扮する男ショーンは、あるトラウマから最後の最後まで決闘に応じることができないでいる。そのトラウマというのは、かつてプロボクサーとして対戦相手を死なせてしまったという「過去」である。だが、そのため自分の妻にさえ臆病者よばわりされてしまうのだ。

そういえば、と比べてしまってよいのかよくわからないのだが、ジャッキー・チェンの映画もたいがいそんな展開じゃなかったろうか。あれはほとんど「いじめられっ子」が逆ギレするようなパターン。子供のころ夢中になっていたウルトラマンなんかだって早く変身しちゃえばいいのになかなか変身しないのだが、これはまあ、ちょっとぜんぜん話が違うというのは「決闘シーン」のあるドラマに疎いぼくでもさすがに分かる。

話は見事に逸れたが、この映画もまた、我慢に我慢を重ねて追いつめられるおよそ100分と溜まりに溜まったエネルギ-が一気に爆発する30分との二部構成になっている。この映画のことを教えてくれた常連のお客様(競馬好き)は、ウマを撮らせたらジョン・フォードの右に出る者はいないんじゃないか、と言う。なるほど、劇中の競馬シーン、アイルランドの大自然の中を疾走するウマたちのド迫力はまさに圧巻だ。ジョン・フォードがはたしてウマを巧みに操る乗り手だったかどうかについてぼくは知らないのだが、観衆の心理をしっかり掌握し、最後の決闘シーンで一気にカタルシスを味わわせるあたり見事な手綱さばきと感心せざるをえない。

ネットですこし調べると、この映画が単純なエンターテインメント作品である以上により深い示唆に富んだ問題作―自身アイルランド系移民の子供としてアメリカで育ったジョン・フォードによる故国アイルランドへのひとかたならぬ熱い思いだとか、アイルランドという国をめぐるさまざまな歴史的、政治的背景だとか―であることがわかるのだが、個人的にはあまりそういうことはかんがえずに、ただひたすら単純に、あたかも手づかみで鶏の丸焼きでも食べるみたいにその無骨さと素朴な味わいを楽しんだのだった。

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フランシス・フォード/ウォード・ボンド/ジョン・ウェイン/ヴィクター・マクラグレン/モーリン・オハラ

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コメント
この記事へのコメント
はじめまして、通りすがりの者です。

私もこの映画好きです。
去年、当時撮影に使われた場所をいくつか訪れることができました。
私のブログに幾つか写真があるので、お時間があればぜひ寄って見て下さい。
(2008年10月31日付けのブログに詳しくあります)

失礼しました。

2009/01/05(月) 21:13 | URL | kaz #-[ 編集]
はじめまして
kazさん

コメントありがとうございます。アイルランドにお住まいなんですね。

ブログ拝見しましたが、駅やパブ、建物などが50年以上も前だというのにほぼ当時のままの姿で残されていることに感激しました。日本では考えられないことですね。

↓は、スコットランド出身のミュージシャンで後にアイルランドに住み着くことになるマイク・スコットが、コンネマラ地方(たしか『静かなる男』のロケがなされたのはこのエリアだったとか)の学校で子供たちを前に演奏している映像です。すごく行ってみたくなりました。

http://jp.youtube.com/watch?v=pLAPOxpXGkU
2009/01/06(火) 21:14 | URL | moi店主 #mLjQvPPA[ 編集]
素敵なライブ映像ですね!マイク・スコットのことは知らなかったけど、彼の情熱と子供達の興奮が伝わってきて、ちょっと鳥肌で感動しました!

そうですね、映画はコネマラ地方で撮影されました。
駅跡は「撮影に使われました」という案内があるだけで、今はひっそり、という感じですが、あのコング村は今でも世界中の「静かなる男」ファンが集まってきますよ。
2009/01/07(水) 23:59 | URL | kaz #-[ 編集]
コネマラ地方
> kazさん

歌っているのはマイク・スコットがフロントマンを務めるThe Water Boysの名曲ですが、けっして大ヒットしたわけでもないこの曲を子供たちが一緒になって合唱する光景に、ぼくもはじめて観たときちょっと目頭が熱くなってしまいました。

彼が、そのThe Water Boysとしてアイルランドのミュージシャンとともにダブリンでつくったアルバム「Fisherman's Blues」も素晴らしいですよ!機会があったらぜひ↓

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B000008M54/moicafe-22/ref=nosim/

実は以前この映像を観た後、コネマラ地方のことが気になりちょこっと調べてみたのですが、個人的にその自然はまさにツボという感じで、いつかアイルランドを旅する機会があったらぜひ行ってみたいと思っています。

もちろん、その折にはコング村も訪れてみたいものです。
2009/01/09(金) 21:16 | URL | moi店主 #mLjQvPPA[ 編集]
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