北欧、フィンランドをこよなく愛するカフェ店主がつづる日々のあれやこれや。

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お正月といえば、きまって登場するのがユニークな「福袋」。ことしも「ボクシング世界王者とのスパーリング権利」とか「新宿駅の一日駅長体験」、はたまた「婚活支援福袋」といったあんばいで、ほとんど百貨店どうしがアイデアの奇抜さを競いあっているような印象すらある。

ところで、ぼくがこの正月手に入れたのは

Kino Iglu [キノイグルー]の有坂氏があなたのためおすすめ映画をセレクトしてくれる」

という福袋。

というのはもちろん真っ赤なウソで、たまたま年末に有坂くんと立ち話をした折、正月休みに観る映画でおすすめは?という話をしたところ、しばらくして映画のタイトルがずらりと並んだメールがぼくのもとに届けられたというわけ(有坂さま、この場を借りてあらためてお礼申し上げます)。セレクトされた作品は年代も国もバラバラだが、いかにもぼくが観ていそうな映画は巧みに除けられているあたり、さすがは有坂くんである。

さっそく大晦日に何本かまとめて借り意気揚々と家に戻ったものの、風邪のせいで映画を観る気力が失せてしまい、けっきょく休暇のあいだに観れたのはたったの一本だけだった。そしてその唯一の一本がこの作品、『ジョルスン物語』だ。アル・ジョルスンという実在の、アメリカを代表する歌手をモデルにした、いわば「伝記物」である。

厳格なユダヤ人の家庭に育った少年が、ひょんなことからその美声を買われ旅回りの一座にスカウトされる。はじめは猛反対する両親だったが、すぐさま息子の天賦の才能を認め、彼の活躍を温かい目で見守るようになる。

持ち前の美声と、顔を「黒人風に」黒塗りにしてのユーモアたっぷりのパフォーマンス、そしてなんといっても観客の楽しむ顔を見るためならどんな苦労も厭わないという天性のサービス精神で、ジョルスンはあっという間にスターダムをのしあがる。

と、ここまではいかにも順風満帆といったところで、その輝かしいサクセスストーリーがさまざまなエピソードとジョルスン本人が吹き替えたというヒットナンバーの数々とで、まさにジェットコースター並みのスピードで語られてゆく。

そしてそんなアル・ジョルスンの「決め台詞」は、

お楽しみはこれからだ (You ain't heard nothin' yet)

というもの。もう十分楽しんだよ、という観客を制して、いやいや、まだ、あんたがたはなんも聴いちゃいないよというわけで、もちろん観客は大喜びの拍手喝采、彼のエンターテイナーとしての旺盛なサービス精神を物語る名文句なのだが、同時にそれが彼にとっての最愛の人に悲しい決断をさせるきっかけとなってしまうところがなんとも皮肉である。

それでも、そんなちょっとほろにがなエンディングに反して、この映画、けっして後味が悪いというふうに感じられないのはなぜだろう? それはもしかしたら、観客を前に歌い踊るジョルスン(ラリー・パークス)の表情がいつもあまりにも、ありえないくらいに幸福そうにみえるから、じゃないだろうか? そしてその歌声(実際のアル・ジョルスンによる吹き替え)ときたら、まるで羽毛のように軽く柔らかく、思わずこちらの表情までほころばせてしまうような種類のものなのだ。

ひとびとに束の間の幸福をもたらす使命を帯びて天上よりつかわされた孤独な天使、というのがこの映画を通じてえた、ぼくのアル・ジョルスンに対する印象。家出した少年時代の彼を連れ戻しにきた両親が、保護された教会の聖歌隊で一際うつくしくソロ・パートを唄う息子の姿を目の当たりにして連れ帰ることを断念するシーンなどは、それが実話かどうかはともかく、ジョルスンにどこか天使的なイメージを垣間見させる隠し味になっているのかもしれない。もちろん、ほんとうに彼が天使であったならみずからに課せられた使命をよろこんで全うしたことだろうが、そこはやっぱり「人間」なのであって、そこがまた観ているこちらにとっては切ないところでもある。

それはそうと、有坂くんがセレクトしてくれた映画はぜんぶで二〇本ほど。そのうち、ぼくがすでに観たことのあるもの、それに今回観た『ジョルスン物語』を除いても、まだ観ていない映画は十五本も、ある。まさに、お楽しみはこれからだ(You ain't seen nothin' yet)


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コメント
この記事へのコメント
ジョルスン物語
懐かしいですね。今を去ることウン十年前、今は亡き国立スカラ座で見ました。
高校の体育祭の振り替え休日で、雨の日の午後でした・・・。

正統派のアメリカミュージカル映画・・・という感じで、高校生の無垢なハートにずっしりと・・・

実はウエストサイド物語を見に行ったはずなのに、初日で配給元からフィルムが間違って送られてきたという・・・

帰り際にフリーチケットをもらったものの、部活に恋に忙しい女子高校生は、上映期間中に見に行けず、結局ウエストサイドを見たのはだいぶあと・・・大学生になって後でした。

懐かしい思い出です。

スカンジナビアホットドックのファンです。

2009/01/22(木) 00:24 | URL | 本町4丁目マダム #-[ 編集]
こんにちは
> 本町4丁目マダムさま

いつもご利用いただきありがとうございます。

ウェストサイド物語とジョルスン物語、おなじハリウッド製のミュージカルとはいえ趣はずいぶんと違いますね。

ジョルスンの方が、大人になってからのほうがしみじみと感じる部分が多そうですが、雨の日の午後と国立の映画館とが一体となって本町4丁目マダムさんの思い出のひとコマにしっかり焼き付いているようですね。
2009/01/24(土) 12:40 | URL | moi店主 #RmDxFykk[ 編集]
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